止血法
人間の血液量は、体重の7〜8%(60kgの人で約5リットル)になります。
3分の1以上の出血で生命に危険が及びます。
1 出血には2種類あって、
動脈性の出血・・・勢いよくふきだす。鮮やかな赤色。
静脈性の出血・・・じわーっとにじみ出る。どす黒い。
2 止血するには、
直接圧迫止血・・・ 傷口に清潔なガーゼ・ハンカチ等をあて、手または包帯でしっかりと押さえる。
ほとんどの場合、これで止まります。
関節圧迫止血・・・ 直接圧迫で止血できない場合など、出血量が多い場合に有効。傷口よりも心臓に近い動脈を、手や指、包帯で圧迫し血流を止めます。
止血帯も有効である。
3 よくある出血
鼻 血
ほとんどの原因は、鼻の入り口の毛細血管からの出血なので、小鼻を押さえたり、綿を鼻に詰めたりして止血することが可能です。
止まらない時は、両目尻の間をしばらく押さえるとよいです。
額から鼻にかけて冷やすのも効果的です。
横になり、頭を下げると血液が口に流れ込み気分が悪くなるので、頭は下げない。(上を向くのもダメ)
指の切り傷
指先の傷は神経が集中しているため、大変痛いものです。かなり出血もします。まずは直接傷口を、清潔な布巾や脱脂綿などで圧迫します。大概の切り傷の出血はこれで止まります。
開いた傷口を、強く圧迫するのはちょっと抵抗を感じますが、勇気を奮って握って下さい。
1 やけどの程度
第1度 赤くヒリヒリ痛みます。
第2度 皮膚がはれ赤くなり、水ぶくれができます。
焼けるような強い痛みがあります。
第3度 皮膚は乾いて白くなったり黒こげになったりします。
痛みはほとんど感じません。
2 病院に連れて行くべきやけど
・ U度以上のやけど(処置を誤ると、さらに深いやけどに進行する)
・ 顔のやけど(傷痕やシミが残る)
・ 関節部分のやけど(ツッパリ感が残る)
3 処置
・ 重症、軽症にかかわらず、患部をよく冷やします。(最低30分)
・ 水疱に直接水道水をかけると水疱が破れ、傷痕が残りやすくなる。氷やアイスノンを活用するとよい。
・ 熱湯などにより、衣服の上から受傷した場合は、脱がせずにそのまま冷やす。冷やしながら、ハサミで切るなどして脱がしていく。
・ 民間療法は、感染の原因になるのでしない。
熱中症とは、体の中と外の"あつさ"によって引き起こされる、様々な体の不調です。
熱中症は、熱波により主に高齢者に起こるもの、幼児が高温環境で起こるもの、暑熱環境での労働で起こるもの、スポーツ活動中に起こるものなどがあります。
熱中症というと、暑い環境
で起こるもの、という概念があるかと思われますが、スポーツや活動中においては、体内の筋肉から大量の熱を発生することや、脱水などの影響により、寒いと
される環境でも発生しうるものです。実際、11月などの冬季でも死亡事故が起きています。また、運動開始から比較的短時間
(30分程度から)でも発症する例もみられます。
1 原因
1)外的条件・・・@気温や湿度が高い
A輻射熱が大きい
B風が少ない
C換気が不十分
D通気の悪い衣服
2)内的条件・・・@激しい運動
A不適当な水分の摂取
B睡眠不足
C貧血や空腹時
D小児・肥満・老人
2 熱中症の予防
1)体調を整える・・・睡眠不足や風邪ぎみなど、体調の悪いときは暑い日中の外出や運動は控える。
2)服装に注意 ・・・通気性のよい服を着て、屋外では帽子をかぶる。
3)水分補給 ・・・「のどが渇いた」と感じたときには、すでにかなりの水分不足になっています。定期的に少しずつの水分補給が効果的。
夏場は汗とともに塩分も失われるので、0.1%程度の食塩水もしくはスポーツドリンクを飲むのが良い。
4)年齢も考慮する・・子供は体内の機能が発達途中なので、熱中症になりやすい。大人以上に気をつけましょう。
3 熱中症の分類
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症 状 |
主な原因 |
熱失神 (日射病) |
めまいがしたり、失神したりする |
高温や直射日光によって血管が拡張して、血圧が下がることで生じる |
熱けいれん |
暑い中での運動や作業中に起こりやすい、痛みを伴った筋肉のけいれん。脚や腹部の筋肉に発生しやすい。 |
汗をかくことで、水分と塩分が失われ血液中の塩分濃度が低下して発生する。 水分を補給しなかったり、水分だけを補給したときも発生する。 |
熱疲労 |
大量の汗をかき、皮膚は青白く体温はやや高め。 めまい、頭痛、吐き気、だるさ等を伴う。 |
体内の水分や塩分不足、いわゆる脱水症状によるもの。 熱射病の前段階ともいわれ、この段階での対処が重要となる。 |
熱射病 |
汗をかいておらず、皮膚は赤く熱っぽい。体温は39度を超えることが多い。 めまい、吐き気、頭痛のほかに、意識障害、錯乱、昏睡、全身痙攣などを伴うこともある。 |
水分や塩分の不足から、体温調節機能が異常をきたした状態。 ほうっておくと死に至ることもある。 |
4 応急処置
1)休息・・・・安静にさせる。そのために安静にできる環境まで移動する。
衣服を緩める、または必要により脱がし、体を冷却しやすい状態にする。
2)冷却・・・・@涼しい場所(クーラーの効いた部屋、風通しの良い日陰などで休ませる。
A冷水タオルマッサージと送風
衣類をできるだけ脱がせて、体に水を吹きかける、その上から
冷水に浸したタオルで手や脚をマッサージする。(血管の収縮
を予防する)うちわ、タオル、服などで送風する。
B水を体表面にかけて送風する。水の気化熱を利用し冷却する。
C首、わきの下、太もものつけ根を冷やす。
※冷却のポイント @震えを起こさせない。
A意識が無い患者は、意識が回復し寒いと訴えるまで続ける。
Bやりすぎを恐れない。(人間の体は高温に弱く、低温に強い)
C氷を直接当てない。
3)水分補給・・・意識がはっきりしている場合に限り、水分補給を行う。0.9%
の食塩と電解質の入ったものを飲ませる。吐き気や嘔吐がある場
合は、無理には飲ませない。
登山道を歩いていて何かのはずみでバランスを崩したり、石や木の根につまずいたり、木道で滑って転んだりして足を挫いてしまうことは割りとあるケースです。捻挫は,受傷後すぐに施す手当の善し悪しで痛み,腫れの程度が決まります。
足を捻る
↓
靭帯を損傷する
↓
内出血を引き起こす
↓
内出血により腫れる
↓
痛い
捻挫の処置のポイントは,内出血を抑えることにあります。すなわち止血です。
1 処置(RICE)
REST(休息)
直ちに受傷部を動かさずに休ませ,出血を抑える
ICE(冷却)
速やかに,受傷部を冷やし続ける
COMPRESSION(圧迫)
同時に圧迫包帯等で受傷部の圧迫止血を行う
ELEVATION(挙上)
少しでも出血を抑えるために心臓より高い位置に固定する
※ このRICEの処置を素早く施せば,かなりひどい捻挫であっても翌日には処置したときとしないときとでの差がはっきりと現れます。私は,身を持って経験しています。特に山などでは,しっかりと圧迫固定さえすれば自力で下山も可能です。この受傷直後の圧迫がとても重要です。
2 骨折していたら・・・
基本的には、骨折部位の固定です。
固定には、副木などを用いますが、骨折部位の上下2関節を動かさないように固定することが大切です。
また特に注意することは、骨折端で2次的に血管や神経、皮膚などを損傷しないようにすることです。そのためにも確実な固定が必要となります。万が一,骨折端で血管を著しく損傷したときは、内出血から来るショック症状に注意しなければなりません。骨折部の挙上、全身の保温などに心掛けることが急務となります。顔面蒼白となり,寒気を訴えているようなときは,間違いなく内出血をしています。速やかな対処が必要です。
RICEの処置も有効です。
傷病者を動かしたり、運んだりすることは、どんな場合にもある程度の危険を伴います。どんなに慎重に運んでも、必ず動揺を与えることになるからです。
傷病者の搬送は、非常に重要です。搬送の方法を誤って悪い結果にならないように、現場の状況や環境(協力者・資材の有無)、傷病者の状態(意識の有無)・負傷部位などを把握して正しい方法を選択することが必要です。
1 準備
・ 傷病者に対する手当は完了したか。
・ 傷病者をどんな体位で運ぶか。
・ 保温は適切か。
・ 担架(応用担架)は安全・適切に作られているか。
・ 人数と役割はよいか。
・ 搬送先と経路は決まったか、それは安全な経路か。
2 搬送方法
一人で運ぶ方法 |
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抱いて運ぶ 傷病者がこどもや体重の軽い人であれば、抱きかかえて運ぶこともできます。ただし骨折をしている傷病者をこの方法で運んではいけません。 |
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背負って運ぶ 両膝を引き寄せて抱え込み、傷病者の手首をつかみます。 |
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後ろから運ぶ 意識のない傷病者など、とりあえず危険な場所から安全な場所へ移すときに役立ちます。 傷病者の足を重ね、頭側から肩の下に手の平を上にして手を入れ上体を起こし、両わきの下から手を入れて、傷病者の臀部を床から上げるようにして引っ張ります。 |
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2人で運ぶ方法 |
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両脇について運ぶ 重症者でなく、2人の救助者の首に自分でつかまることのできる傷病者に用います。救助者は頭側の手で傷病者の背中を支え、他方の手を傷病者の膝の後ろに回してお互いに手首を握り合い、持ち上げます。 |
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前後について運ぶ 1人が傷病者の背中に回り、わきの下から手を入れ前腕をつかみ、もう1人が傷病者の足を重ねて抱え、傷病者の上体側から立ち上がります。 |
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3人で運ぶ方法 |
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両側について運ぶ 傷病者を上向き、または必要があれば下向きにして運ぶことができます。 片側に2人、反対側に1人ついて、傷病者の足側の膝をついて、手の平を上にして傷病者の体の下に手を入れます。 頭側の救助者の合図によって、傷病者を膝にのせ、手首を握り合って、「立て」の合図で立ち上がり、傷病者の足の方向へ進みます。 |
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